最近面白い本に出会いました。
『残月記』 小田雅久仁著
それぞれが月にまつわる3つの短編からなる本です。
そのどれもがSF近未来のフィクションなのですが、著者の技量が素晴らしく、あたかも自分ごととして現実に起きていそうな雰囲気を醸しているのが印象的です。
特に3つめの作品で表題にもなっている「残月記」は、最初の一行目から頭が混乱するほど現実味を帯びていて、そこに描かれるコロナのような疫病があたかも実際の私達に起きているかのような錯覚を覚えてしまったほど。読み進めればそれが近未来の話だということに気が付くのですが、過去を振り返る場面でもそんなことあったっけ?とつい考えてしまうような力量のある作品です。
それで、ああ、この作者は「月の作用」を星読み的にご存知なんだろうな、と思い、さらにそのことを感じながら読むと一層深く物語に入り込めるのです。
月の影響力。
月の魔力。
まさに今の時代だからこそ、この作品は多くの人に受け入れられやすいのかもしれないと思いました。
「今の時代」とは、占星術的に申し上げれば「土の時代」から「風の時代」への切り替わりの過渡期となっています。
占星術上では「火・土・風・水」という4つの要素で時代を大きく捉えています。一つの時代は200年〜240年の期間となり、役目を終えると次の要素に入っていくことになります。
産業革命から始まり、超高層ビル建築、不動産売買などの物質の時代であった「土の時代」
どの風に乗ろうかと、知性・情報・人との繋がり・思考にスポットを当てて流れをつかんでいく「風の時代」
ちょうどコロナが発生した頃に切り替わり始めていました。節目を迎えていたのですね。
風に乗ってウィルスが蔓延している、とも。
風の時代では、目に見えないもの(霊的なもの)などにも関心が高まると言われています。「残月記」の作者もまた、目に見えない月の影響力について日々思うところがあるのかもしれません。
では実際に月の影響とはどんなものでしょうか?
月は地球のまわりを回っているので、太陽のまわりを回る惑星とはまったく異なる占星術的な役割を持ち、個人の私生活、生命力、衣食住などに関係すると言われています。かんたんに言えば、パーソナルな分野が月のテリトリーです。
『月星座』松村潔
星読みで読み解く月というものは、その人の無防備な時に現れてくるものであると考えられれています。
例えば、その人の表面的な部分ではなく素の自分、ぼーっとしているときに現れる資質であり、リラックスできるものを表していたりします。
「残月記」にあったように月が裏面を見せるということはないですが、新月から満月へと28日かけて形を変えていきます。これが人の気分に作用して、不安定を引き起こしています。
そう考えてみるだけでもいかに月というものが私たちの日々の健康にとって大切なものかがわかると思います。